近視の進行を抑制する目薬です
近視が強い人は眼球が長い
子どもの近視は、主に眼球が楕円形に伸びてしまう(眼軸長が伸びる)ことで、ピント位置がずれ、生じるケースが多くあります。近くを見ることが習慣化してしまうと近視になりやすく、一度眼軸長が伸びてしまうと戻ることはありません。そのために眼軸長の伸びを抑えることが、近視の進行を抑制するためには重要となります。低濃度アトロピン(マイオピン)には、眼軸長を伸展させる働きのあるムスカリン受容体をブロックする効果があると言われています。
また、高度な近視の場合、回復不可能な視力喪失、黄斑変性症、網膜剥離、または緑内障に発展する可能性もあると言われています。
マイオピンの効果について
シンガポール国立大学の臨床試験で、0.01%アトロピンの近視抑制効果が証明されています。Ophthalmology2012;119(2):347-54
2年間の使用で近視の進行を平均約60%軽減させる良好な点眼薬と言われています。
マイオピン点眼が選ばれる理由
「マイオピン(アトロピン配合)点眼薬」は、近視の進行を遅らせる(眼軸長の進展を抑制する)という点で統計的にも臨床的にも有意義な効果が得られるとされる治療法です。
アトロピン1%点眼薬は1960年から、すでに近視治療に使用され続けていましたが、下記のような不快な副作用が引き起こされていました。
- 1.瞳孔がひらき続けることによる、まぶしさと強い光による不快感や目の痛み
- 2.目の遠近調節機能(手元を見る作業)が低下し、近くの物がぼやけて見え、読み書き等の近作業が困難になる
- 3.アレルギー性結膜炎及び皮膚炎
しかしながら、「マイオピン」は、超低濃度(0.01%および0.025%)のアトロピンを点眼することにより、近視の進行スピードを効果的に抑えると同時にアトロピン1%点眼薬のような不快な副作用を回避できるよう開発されました。
※0.025%製剤は0.01%製剤と比べ、より優れた近視進行抑制効果を示すことが確認されていますが、0.01%製剤よりもまぶしさが感じやすくなる場合があります。
マイオピンの特徴
・副作用がほぼ皆無の近視抑制薬です。
・近視の進行を平均60%軽減させると言われています。
・日中の光のまぶしさに影響を及ぼさないため、サングラスもほぼ不要です。
・目の遠近調節機能(手元を見る作業)に殆ど影響を与えません。
・毎日就寝前に1滴点眼するだけの、非常に簡単な治療法です。
・点眼薬1本(5ml)は両眼用で1ヶ月間の使いきりです。
・点眼薬はGMP(医薬品製造管理および品質管理基準)準拠の工場で製造されています。
マイオピンの安全性
・治療によるアレルギー性結膜炎や皮膚炎などの報告はありませんでした。
・眼圧(IOP:Intraocular eye pressure)に影響を与えませんでした。
・白内障を形成するといった報告はありませんでした。
・点眼終了後も目の遠近調節機能の低下や瞳孔がひらき続けるといった報告はありませんでした。
・電気生理学上、網膜機能に影響を与えるという報告はありませんでした。
マイオピン治療の対象となる方
- 軽度(-1D)から中度(-6D)の近視がある方
- 6~12歳の方
- 定期通院ができる方
処方までの流れ
まずは治療対象かどうか精密検査を行います。特殊な散瞳薬を使用しますので約2時間かかります。受付時間によっては散瞳は別日になります。
治療開始が決まれば、まず1本処方します。副作用の確認をする為、1か月後に再度受診して下さい。その後は3か月おきの定期検診が始まります。(定期的に精密検査・散瞳検査があります)
マイオピンの使用方法
寝る前に両眼に毎日1滴ずつ点眼します。
※マイオピンは1容器1ヶ月間の使いきりとなります。
マイオピンを点眼すると瞳孔が大きくなり、まぶしさを感じます。就寝前に点眼すれば、朝には元に戻ります。
起床後にまぶしさを感じる場合は、前日のマイオピンの点眼時間を早めていただくなど点眼時間の調整が必要になります。
その他重篤な副作用の報告はありませんが、充血、目ヤニ等の症状がでたら直ちに使用を中止し、診察時間内に受診して下さい。
マイオピン0.01%と0.025%
マイオピンには0.01%と0.025%があります。濃度が濃い方がより近視抑制効果が得られます。マイオピンの効果は自覚的に感じにくいものです。点眼後も視力の低下は続きますので、0.01%から始めた方は「効果が弱いのかな?」「いつ0.025%にしたら良いかな?」等不安はつきものです。治療効果を考慮し、当院では0.025%のみ採用しております。0.01%同様に重篤な副反応の報告はありません。
費用
マイオピンの治療は自由診療です。
健康保険・医療費助成制度(子ども・親・障害)・生活保護手帳は適応されません。
マイオピン0.025%(1本):3,000円(税込)(2024年11月からは3,400円)
検査料金:1,000円(税込)
例)3本処方の定期受診時の費用は(3,000円×3本+1,000円=)10,000円(2024年11月からは11,200円)
Q&A
Q:治療期間はどれくらいですか?
A:年齢にもよりますが、2年以上の継続使用をお勧めしています。まず2年間使用し、効果をみるというのが望ましいです。
Q:必ず効果はありますか?
A:残念ながら9%の方は効果が無かったと報告されています。定期検診時に効果判定をしながら治療の継続をするか相談しましょう。
Q:点眼を中止するとどうなりますか?
A:2年以上点眼しなくても効果は維持できるといった報告がある一方、中断後に近視が再度進行したというデータも出てきております。
ですがお子さんが治療に疲労を感じないことが大切です。中断後は見える環境を整えるために定期検査が重要になります。
Q:視力は良くなりますか?
A:残念ながら視力は良くなりません。眼鏡もコンタクトも必要です。近視の進み具合を抑える目薬とご理解ください。
Q:12歳を過ぎていますが大丈夫ですか?
A:現在までにされている報告は6~12歳を対象にしたもので、臨床的なデータがありません。しかし、実際は高校生まで身長は伸びますし、効果は十分期待できます。
ご家庭でゆっくり検討して下さい
マイオピン点眼は近視の進行を軽減することが目的の薬剤です
近視の進行を完全に止めることは出来ません。視力も低下しますし、メガネが不要になる事はありません。また、現在の視力が治る(視力が上がる)ことはありません。
ですが、高度近視を防ぐことで将来の重篤な眼疾患リスクを下げることが出来ます。お子さんの健全な視力を守るためには有効な治療法です。
治療は長期的であり、お子さんが疲労を感じてしまうこともあります。目薬も高額となりますので、ご家庭でゆっくり検討して下さい。
すこしでも出来ることを
現代の子どもたちは、スマホやゲーム・タブレット等デジタル機器を操作することが必要不可欠です。
昔に比べると勉強時間も必然的に増え、近視になりやすい環境で生活しています。これらを排除することは難しく、上手に対処するしかありません。
アメリカ眼科学会では20分継続して近くを見たら20フィート(6m)先を20秒眺めること(20-20-20ルール)が推奨されています。
また、近視進行・眼精疲労を抑制するドーパミンにも注目されています。太陽光を浴びると目の奥でドーパミンが生成され、眼軸の伸びが抑えられることがわかりました。 天然の近視進行抑制剤といえます。
1日2時間の屋外活動を理想としていますが、まずはできる範囲で取り入れてみましょう。